君が好きなんて一生言わない。
じわりと涙が溢れそうになって、泣いちゃだめだと手の甲で拭う。


「…探そう」



例えこの場所にいなかったとしても、それは他の場所にはいるということ。

この学校のどこかにはいるはずだ。


空き教室を出て私は走り出した。

椎先輩が行きそうな場所、食堂、花壇、図書館、思いつくところは全て回ってみたけれどどこにも椎先輩の姿はなかった。

そして無情にも昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いて、私は諦めるしかなくなった。


教室に戻ってくると真っ先に紗由が視線に入った。

紗由は何も言わなかったけどすごく心配してくれているのは分かった。


「先輩、見つからなかった」


私は笑ってそういうけれど、紗由は眉を下げて私よりもずっと悲しそうな顔をした。

麗になんて言ったらいいのか、と考えているのか俯いている。


「でもね、まだ私は諦めないよ」


はっきりと言い切ると、紗由は顔をあげて驚きの顔をしていた。


「決めたから。ちゃんと言うって」


「なんだかまるで、かくれんぼしてるみたいだよね」なんて言うと紗由は呆気にとられたような顔をして、それから笑った。

これがもしかくれんぼなら、椎先輩がいそうな場所を探し当てなくちゃいけない。

椎先輩が絶対に通る場所。

今から、放課後まで、椎先輩が必ず通る場所。


そう考えてみると、ひとつだけ思いつく場所があった。


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