君が好きなんて一生言わない。
「先輩。椎先輩はまだ教室におられましたか?」

「いや、あいつはもう教室には残ってない。あいつがこんなに遅く校舎に残っているとは考えにくいし、もう帰ったんじゃないか?」


ユズ先輩の話を聞きながら、私はうなだれた。

まだ校舎に残っているって思ってたけど、それは間違いだったのかもしれない。

部活動のためにすごい数の人が昇降口を出て行ったときに、もしかしたら見落としてしまったのかもしれない。


ユズ先輩は腕組みをして少し考えた後、「園芸部の花壇は見に行ったか?」と尋ねた。


「花壇、ですか?まだですけど…」


「それなら見に行ってみる価値はあるかもしれない」


「あいつが放課後にいるとしたらそこしかない」とユズ先輩は力強く言った。


「分かりました。行ってみます!」


「ありがとうございます」と頭を下げてその場を去ろうとした時だった。


「麗ちゃん!」


ユズ先輩に呼び止められた。


「あいつは、椎は、ほんと強くて、でも脆いところもあるんだ。だから、あいつを傍で支えてやってほしい」


「どうか頼む」とまっすぐな目で見つめられる。

その真剣な姿に、断るなんてできるわけもなかった。

頭を下げて、それから花壇の方に走っていく。


「頑張れ、麗ちゃん」


ユズ先輩の言葉が追い風になる。

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