君が好きなんて一生言わない。
花壇に行くとそこでようやく椎先輩を見つけた。

花壇の方にしゃがんで何やら花を見つめているらしかった。


「椎先輩!」


その後姿に呼びかけると、椎先輩はゆっくり振り返った。


「麗ちゃん…」


「やっと、見つけた。先輩…」


その言葉に椎先輩は眉を下げて視線を地面に落とす。


「…探してたの?」


それでも笑い話をするように、茶化そうとするから私はそれに少しだけ苛立って「探しました!」と強く言った。


「昼休みも空き教室にもいないし!一体どこにいったのかと…」


けれど先輩は「昼休みだから、自由にしていいでしょ」と言った。


「俺、麗ちゃんと約束した覚えはないよ」


言える言葉が何もなかった。

全く持ってその通りだった。


椎先輩と昼休みにご飯を食べる約束をしたことは一度もない。

だけど。



「私は、椎先輩に会いたかったです」



先輩に会いたくて、でも会えなかったからこんなに悲しかったんだと思う。

椎先輩は目を見開いて黙っていた。

私は椎先輩に一歩近づいて「先輩に聞きたいことがあります」と宣言した。


「…俺に答えられることなら」


椎先輩のその言葉を聞いて、私は息を吸った。


「先輩はどうして私を避けるんですか」



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