君が好きなんて一生言わない。
先輩は少しだけ止まって、それから「なにそれ」と笑った。


「そんなつもりないよ」


その笑顔に「嘘ですよね」と私は言い切った。


「私が昨日言おうとした言葉、わざと遮ったんですよね。私が言い終わる前に」


私の言葉を聞いた椎先輩の表情は崩れた。

目を見開いて、それから苦しそうな顔をする。



「麗ちゃん…」


「今度は、言わせてくれませんか。私の一世一代」


にっこり微笑むと、先輩は押し黙ってしまった。


私はひとつ呼吸をすると、何から話し始めるか迷ってしまった。

言いたいことがたくさんある。


「ありがとうございます。私を守ってくれて」


鉢植えを壊して鬼村先生に怒られそうになったときも、美紅ちゃんに教科書をやぶかれたときも、お昼ご飯も、バスケ部の試合の時も。

先輩はいつでも私を守ってくれた。

そばにいてくれた。

それがどれだけ嬉しかったか、ありがたかったか、計り知れない。


「小さい頃の約束を今も守ってくださって、本当にありがとうございます」


小さい頃の約束、という言葉を聞いた椎先輩は表情を一変させた。

目を見開いて、信じられないと言わんばかりの表情をする。


「え、小さい頃って…」


「先輩のおかげで思い出しました」


ずっと心の中に押し込んでいた思い出。

きっかけは、先輩の言葉だった。

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