君が好きなんて一生言わない。
「でも、良かった。おばさんに託された花だから」


「ちゃんとここまで守れた」と先輩は少し嬉しそうだった。

その表情を見て私まで嬉しくなった。


「そうだ、お母さんにちゃんと報告しないと」


思い出して、私は墓前に手を合わせる。


「…私、来月に中村家を出ることになったよ。

中村家を出て、椎先輩の家で暮らす」


記憶を思い出したことを知った椎先輩のお母さんがそう言ってくれた。

椎先輩のお母さんは私のお母さんとすごく仲が良かったみたいで、お母さんと私が親戚によく思われていないのも知っていたらしい。

私が中村家に移ったことを知ってからも、中村家での生活のことを本当に心の底から心配してくれていたんだそうだ。

私が出て行くことに親戚や中村家が何か言ってくるかと思ったけれど、中村家としても私の存在は邪魔だから厄介払いできるならありがたい、と話はとんとん拍子に進んでいった。

椎先輩が美紅ちゃんに言ってくれてからは、美紅ちゃんは私を見ても前までのような虐めはしなくなった。今までは知りたくても知れなかったお母さんのお墓の場所も、美紅ちゃんが餞別にと教えてくれたんだ。


ちょっとずつ、前に進めているような気がする。


「報告も終わったし、そろそろ帰りましょうか」


私が立ち上がると、「もういいの?」と先輩は言った。


「ずっと来たかったんでしょ?」


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