君が好きなんて一生言わない。
「なんとなく形になったね」


しばらくして、バラバラになった教科書は一つの本の形になった。

つぎはぎしたテープの跡がたくさんあるけれど、それでも先輩が元に戻してくれたんだと思うとなんだか嬉しさもある。


「…ありがとうございました」


私が頭を下げると「俺も楽しかったから」と先輩は素っ気なく言う。


ふっと今何時か気になって時計を見ると、もう授業が始まって30分は過ぎていた。

行きたくないけど、行かなきゃ。

授業に行こうと準備を始める私を見た先輩は「一緒にさぼっちゃおうよ」と、とんでもないことを言い出した。悪魔の囁きだ。


「え?」


「麗ちゃんに酷いことする人達のところにわざわざ出向かなくてもいいでしょ」


私は目を見開いた。


先輩は、私のことを思ってそんなこと言ってくれたの?

こんな私みたいなやつのことを思って?


そんなこと思うだけで嬉しくて、胸が痛くなる。


「で、でも。先輩と一緒にいるとこ見られたら、血祭…」


「じゃあ俺に付き合わされたってことにして。俺のせいにしていいから」


ここまで言われてしまったらもう、先輩のペースだ。逆らえない。


私は溜息を吐いて、もうどうにでもなれって思って頷いた。


「じゃ、決まりだね」


先輩はそう言うと私の腕を掴んだ。


「え?」

「一緒にいるとこ見られたら血祭なんでしょ?」


誰にも見つからない場所に行こうって言った。
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