君が好きなんて一生言わない。
先輩に連れてこられたのは空き教室。

普段誰も使わない上に今は授業中だから、先生はおろか足音ひとつ聞こえてこない。


「ここって鍵がないと、開かないんじゃ…」


すると先輩は「ここの鍵、壊れてんだよね」と言って扉を開けた。

難なくその扉は開いて先輩は迷いなく部屋に入っていく。


「おいで」


先輩は私に手を伸ばす。

その温かい微笑みに、今が授業中だってことも忘れてその手を掴んだ。



「ようこそ、秘密の隠れ家へ」



先輩は微笑んだ。

先輩の、秘密の隠れ家。


秘密なんて言葉は簡単に私の心を躍らせる。


空き教室は校舎の中とまるで時間の流れが違うようだった。

暖かい日差しが教室に差し込んでいる。

穏やかでゆるやかな世界がそこにあった。


「先輩はいつもここに来るんですか?」


「まあね」


先輩は机の1つに腰をかけてそう言った。


「ここ、教室から遠いし誰も来ないからいいんだ」


確かに、そうだろうなと思った。

こんなに優しくて穏やかな場所は、学校中どこを探しても見つからない。


< 20 / 179 >

この作品をシェア

pagetop