君が好きなんて一生言わない。
「え?」

「なんか、ユズは麗ちゃんのことをすごく気に入ってるみたいなんだよね」と溜め息混じりの椎先輩の言葉に私は目を見開いた。

こんな私が誰かに気に入られるなんて、そんなこと微塵も考えたことがなかった。

嬉しいような、恥ずかしいような、なんだか不思議な感覚がする。


「今週の土曜日、学校の体育館でやるんだって。久々にホームでやるからユズも部員達もすごく張り切ってるみたいで。まあ、もし気が向いたら見に来てやって」


椎先輩はぶっきらぼうに言う。

ユズ先輩のことになるとぶっきらぼうになる先輩が面白くて、ふっと笑みがこぼれた。


「行きます!バスケの試合なんて初めてなのですごく楽しみです」


「ユズが聞いたら喜ぶだろうね」と椎先輩は溜め息を吐いた。


「当日はたくさんの人でいっぱいになるだろうから、待ち合わせしていこうか」


先輩の申し出に私は驚いて思わず「え!?」と声を上げてしまう。

するとそんな私の反応に先輩は驚いた顔をした。


「そんなに驚くこと?俺は普通に、麗ちゃんと一緒に見に行くつもりでいたんだけど…」


「あー俺、もしかして浮かれすぎ?」と少し恥ずかしそうに後ろ髪を掻く先輩に、私は首を横に振ってその手を掴んだ。



「一緒に、行きたいです!」


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