君が好きなんて一生言わない。
先輩は目を見開いていた。


「…結構、積極的なんだね、麗ちゃん」


それで私は自分が今何をしているのか気づいて慌てて手を離した。

近くにある先輩の顔、触れた手首の感触の残る手、真っ直ぐ私を見つめる先輩の瞳。


無意識に情報は頭をいっぱいにして、顔に熱が集まる。


「すっ、すみません!」


あまりの恥ずかしさに俯くしかできない。


…ああ、やってしまった。

どうして私はいつもこうなんだろう。

先輩、引いてないかな、嫌われてないかな…。


そんなことをぐるぐる考えていると「スマホ出して」と落ち着いた声で先輩が言う。


「え?」

「連絡先、知らないと明日会えなかった時に困るでしょ」


私は目を見開いた。

そんな私を見て椎先輩は「麗ちゃんはよく驚くね」と笑う。


当然だ、そんなの。

男の人と連絡先を交換するなんて、一週間前の私じゃ考えられなかったことだから。


連絡先に増えた、椎先輩の項目。

表示される「椎先輩」の文字に嬉しくて心が躍る。


「明日の集合場所とか時間とか、また連絡するから」


どうして、と思ったけどすぐにチャイムが鳴り響いて分かった。

もう、授業が始まる時間だ。

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