君が好きなんて一生言わない。
体育館近くの校舎裏まで走ると「ここまで来れば大丈夫かな」と足を止める。


「麗ちゃん大丈夫?」


私は息が上がって思うように声が出ず、首を縦に振って「大丈夫です…」となんとか答えた。


「先輩、走るの速いですね…」


肩で息をする私に先輩は「そんなことないよ」と余裕そうに答える。


「運動は苦手だから。ほら、園芸部だし」

「…運動部に入ってたら確実にエースですよ。他の部活には興味なかったんですか?」

「ないね」と先輩は即答する。


「園芸部以外は考えていなかったし」


「どうしてそんなに園芸部に?花は好きじゃないんですよね?それなら、どうして…」


問いかけても先輩はやっぱり「この前も秘密って言ったでしょ」と言う。

花が好きじゃないのに園芸部に入った理由を、先輩は教えてはくれないらしい。



「人には言えない秘密もあるの」



先輩が遠くを見つめるのを見て、ああ、これは絶対に言ってくれないなと思った。

先輩は結構、頑固だと思う。

一度決めたら変えない、みたいな。



「それより、その眼鏡は何?びっくりしたんだけど」


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