君が好きなんて一生言わない。
体育館には想像していたよりもずっと多い数のギャラリーが詰めかけていた。

体育館の2階部分が、こんかいギャラリー達に与えられた応援場所。あまりの人の多さに、みなぎゅうぎゅうになっている。

私も押しつぶされるのを覚悟で向かおうとしていたのだけど、先輩に連れてこられたのは別の場所__2階の奥にある避難階段の最上段。

避難階段は万が一に備えて作られた脱出用の階段で、外は体育館の2階入り口へと通じる階段に繋がっている。

1年間通っていても知らなかった、まさに穴場ともいうべき場所だ。


「知りませんでした、こんな場所があったなんて」

「うん、俺もこの前ユズに教えてもらったんだ」


「いいとこだよね」と椎先輩が言うので頷いた。


ここからは試合の様子がよく見える上に、誰の目にもとまりにくい。これほど好立地な場所もそうそうないだろう。

試合はというとまだ始まっていなかったけど、お互いのチームが試合前のミーティングをそれぞれしている。

真剣な顔をしている両チームの張り詰めるような緊張感が伝わってくる。


「ん、あれ緊張してる?」


椎先輩が悪戯っぽく私の顔を覗き込む。

頷けば「麗ちゃんが試合に出るわけじゃないでしょ」と笑われた。


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