君が好きなんて一生言わない。
先輩は不機嫌なのか「どうも」と素っ気なく返事をした。


「これ何の花なんですか?」

「ビオラ。花言葉は【少女の恋】」


ため息交じりのその言葉を胸の中で繰り返す。花に疎い私でも知っている花の名前だった。

それから椎先輩のそばにたくさんの鉢植えがあるのに気づいて、私は思わず「手伝います!」と申し出た。


「じゃ、そこにある鉢を向こうの窓のところに置いてくれる?」

「はい!」

「重いから気を付けて」


返事をしながら持ち上げる。それは見た目以上に重くて少し足元がふらついた。

一歩一歩を確かめながらゆっくり運ぶけれど、抱えた鉢植えのせいで足元はよく見えない。

あ、と思ったが最後、視界はどんどん空を映しながら私の体はゆっくりと後ろに倒れた。

そして、どしん、と大きな音を立ててしりもちをつく。


「いたたたた…」


すると先輩が走ってきて「大丈夫?」と問いかけた。


「頭打ってない?けがは?」


ひどく心配してくれる先輩に「大丈夫です」と私は笑いかける。
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