君が好きなんて一生言わない。
「いえ…。ショッピングセンターに来たのが初めてなので、何があるのかよく分からなくて」
この場にいれることが奇跡みたいなもの。どれもが輝いて見えて、眩しいくらいだ。
ふと隣を見ると先輩は驚いた表情をしていた。
「今まで一度も来たことないの?」
「一度も来たことないです…」
言うのも恥ずかしくなる。
十六年間生きてきて、一度もショッピングセンターに行ったことがない人なんてほとんどいないだろう。しかもこんなに近くにあるのに。
けれど先輩はこんなことを言った。
「麗ちゃんが初めてショッピングセンターに来た時にそばにいれて良かったよ」
その言葉に驚いて目を見開いた。
やさしい顔で微笑む先輩がどうしてそんなことを言い出すのか、私にはまるで分からない。
「先輩、それってどういう…」
どういうことですか。
そう聞こうとしたけど、それに被せるようにして先輩が言う。
「じゃあ行こっか」
先輩は前を見据えて歩き出す。
そのまっすぐな瞳に何が写っているのだろう。何を思っているのだろう。
思いを馳せても、何も分からない。
どこに行くのかも分からないまま先輩の後ろをついていくと、不意に先輩は振り返って「麗ちゃんって食べられないものってあったっけ?」と聞かれた。
「いえ、ないです」
なんでそんなことを聞くのか分からないまま答えると、「じゃあ、ドーナツは好き?」と更によく分からない質問をされる。