君が好きなんて一生言わない。
「はい、好きです」
「よかった」
「え?」
先輩は少し口の端をあげた。
「ドーナツ、一緒に食べよう」
私は目を丸くした。
そんな私を見た先輩は「なんで驚いた顔をしてんの」と言う。
「麗ちゃん、今日も昼ごはんがおにぎり1個だけだったでしょ。もっと食べてもらわないと困るから」
「で、でも、私、お金ないですよ…」
「いいよ奢るから、ね?」
有無を言わせないとでも言いたそうな口ぶりをしている先輩に到底抗うこともできず、私達はドーナツ屋さんに入った。
「…本当に、いいんですか?」
ドーナツと飲み物を頼んで、私達は売り場の隣にあるイートインスペースに来ていた。
「うん。と言っても、麗ちゃんあんまり頼んでないけどね」
苦笑いをしながらブラックコーヒーを啜る先輩。
私は生クリーム入りのドーナツ1個とオレンジジュースを、先輩はブラックコーヒーとドーナツを2個頼んでいた。
あんなに苦いコーヒーなのに、砂糖もミルクもなしで飲むなんて凄い。
羨望の眼差しで見つめていると「どうしたの?」と尋ねられてしまって「何でもないです」と私は答えた。
「それだけで足りるの?もっと頼んでも良かったのに」
首を横に振った。
「充分なくらい、嬉しいですから」
こんなに幸せなことってないんじゃないかな。
ショッピングセンターに連れてきてもらえるだけでも嬉しいのに、その上先輩とこうやってお茶しているなんて。