君が好きなんて一生言わない。
ストロベリーチョコがかかった、淡いピンク色のドーナツをひとくちかじると広がるふんわりした甘さ。

…ドーナツなんて、食べたのはいつ以来だろう。


「幸せだな…」


しみじみと感じていたことがついこぼれた。

すると椎先輩ははっと顔を上げて私の顔を見る。

目を見開いて、驚きの表情をしている先輩。

その顔を見て、つい独り言を言ってしまったのだと気づいた私は慌てて説明をした。


「あ、あの、幸せだなって思ったんです。こんなに嬉しいことだらけで」


けれど先輩は表情を変えない。

呆然としたような顔をしたままだ。


「せ、先輩?」


呼びかけると、先輩ははっと我に返ったのか「…ごめん」と表情を緩めた。



「…麗ちゃんが幸せなら、いいんだ」



先輩はまた苦いコーヒーを啜る。

私はそれを複雑な気持ちで見ていた。


先輩は何を考えているんだろう。

何を思っているんだろう。

何も語らないその顔を、ずっと見つめても答えはない。


ドーナツを食べ終わって店を出ると、目の前に飛び込んできたのはポップなオレンジ色の書体で書かれた「ペットショップ」の文字と、可愛らしい犬と猫の姿。


「かわいい…!」


くりりとした可愛らしい目でこちらを見つめている子犬を見つけると、思わず駆け寄ってしまった。

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