君が好きなんて一生言わない。
「でも、こんなところでどうしたんだ?それも二人きりで」


2人きり。

ユズ先輩の言葉のせいで余計なことを意識してしまった。


…ああそうだ、私と椎先輩は二人きりでショッピングセンターにいたんだ。

それって、デートと呼ばれるものなのか?


口には出さないけど、脳内は大パニックだ。思考がまとまらないで、顔に熱が集まる。

ストロベリーチョコみたいな、あまくてほのかに酸味のある、キラキラした青春の欠片。



「ユズには関係ないでしょ」



椎先輩は切って捨てるようにそっけなく言う。

面倒だと言わんばかりに不機嫌な顔をする椎先輩に、いつもだったら「そんな怒るなよ」と笑うユズ先輩はなぜか黙っていた。

それどころか真っ直ぐ椎先輩を見つめて、はっきり言った。



「関係はある」



ピリ、と空気に緊張が走る。

まさかユズ先輩がこんなことを言うなんて思っていなかったのか、椎先輩も目を見開いている。

それから椎先輩は目を細めてユズ先輩を厳しい目で見つめる。


「…ふーん、そういうこと。何となく分かっていたけど」


「…俺は本気だ。相手が椎だろうと、絶対引かねーから」


しばらくの見つめ合いの後、ユズ先輩はさよならも言わずに去っていった。


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