君が好きなんて一生言わない。
そして午前の授業が終わり、昼休みがやってきた。

張りつめていた授業中の空気が、チャイムと共にふっと緩む。クラスメイト達が騒めきはじめる。

待ちに待った昼休みの到来に、胸を躍らせるのは私も例外ではない。


「今日も先輩のところ?」


紗由は私に尋ねる。


「うん」


頷く私に、紗由はあったかい笑顔を見せた。


「本当に仲がいいんだね。行ってらっしゃい」

「ありがとう、行ってきます」


私も笑い返して、お弁当を持つと教室を出た。

空き教室に向かうにつれて人の声がどんどん遠くなっていく。

人の姿が見えなくなっていく。

先輩に会えると思うと、その足取りがどんどん軽くなって頬が緩む。


空き教室の前まで来たところで、「清水麗」と鋭い声に呼び止められた。


幸せな高揚感を一気にどん底に突き落とすその声に、びくりと肩が揺れる。


「美紅ちゃん…」


誰、なんて考えるまでもなく分かった。

この声を聞かない日なんて、小学校に入ってから一度もない。


美紅ちゃんは廊下の壁に背を預けて、腕を組んで私を見ている。


「あんたが最近昼に紗由と食べていないのは知ってる。問題は、あんたが誰と食べているかだよ」


心臓が嫌な音をたてる。

冷や汗が背中を伝った。

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