君が好きなんて一生言わない。
「ほんと、訳が分からない。なんであんたみたいなやつが椎先輩と一緒にいられるのか」


「世の中は不公平だ」と溜息を吐く。


けれど私はそんな辛辣な言葉よりも、驚きを隠せなかった。


「え、美紅ちゃん、私が椎先輩と会っていること、知ってたの…？」


紗由以外に誰も知らないと思ってた。

紗由が他の誰かに告げ口をするとも思えないし、誰も知りえないと思っていたのに。


「え？あたしが知らないとでも思ってたの？」


美紅ちゃんは吹きだして笑った。

それから私の腕を掴んで近距離で言葉を放つ。


「あんたのことはずっと見てるよ？あんたが幸せにならないように、ずっと」


私は目を見開いた。

体中が蔦に絡まっていくような感覚がする。

この奈落の底から絶対に這い上がることは許さないといわんばかりに絡みついて、引きずり落そうとする。

這い上がりたいと望むことすら許さないと、その目は語るように鋭かった。



「ねえ、世の中って不平等だと思わない？」


いつになく美紅ちゃんは饒舌だ。

いつもなら私をさげすむような言葉しかかけないくせに、今は他の人に接するような話し方をするから、何を言われるだろうかと心臓が忙しなく鼓動する。


「な、にが…」


「幸せな人もいれば、不幸せな人もいるって話」


いつもはストレートに言葉をぶつける美紅ちゃんが、遠回しにしか話さない。

何を言わんとしているのか、分からない。


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