君が好きなんて一生言わない。
「手、切れるよ」


それなら尚更私がしなきゃいけないことなのに。

私のせいで壊れてしまったのに。


それなのに私に何も文句を言わないで黙々と作業をする先輩。

私は申し訳なくて椎先輩の傍にしゃがんだ。


「気にしないでって言ってるのに」

「だって…」

「じゃあ、きみに仕事をあげるよ」


それからは椎先輩の手足となり働くことになった。

土の袋を運べだの、道具を取りに行けだの、主には雑用だ。

先輩は私が運んだ土や苗を使ってあっという間に鉢植えを作ってしまった。

「こんなんでいいか」なんていいながら、けれど出来上がった鉢植えは花が輝いているみたいに綺麗だった。


すっかり日も落ちて暗くなった頃、「今日はこれくらいにしようか」と先輩が言って、活動は終わりを告げた。


「お疲れさまでした」

「おかげで助かったよ」


そんなことを言う先輩に、私は首を横に振って「助かったのはむしろ私の方です」と言った。

鬼村先生に怒られずに済んだのは、椎先輩のおかげだから。

それよりも私には気になることがあった。

園芸部の活動中というのに部員の姿が見当たらない。

私は少し戸惑いながら「あの、部員の人は?」と尋ねた。
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