君が好きなんて一生言わない。
呆然とする私に美紅ちゃんはなおも言葉をかけ続ける。



「ほんと、あんたは周りにいる人をとことん苦しめるね?

あんたの父親も、あんたの母親と出会わなければ家族と縁を切らずに済んだ。

あんたの母親も、あんたがいなければ夫も悲しませずに済んだ。

おばあちゃんも、あんたがいなければきっともっと長生きできた。

あんたがいたせいで、あんたの父親も、母親も、おばあちゃんまで死んだ

あんたの親戚だってだけで、あたし達家族はあんたを養わなければならなくなった」



「ねえ、分かってる?」と美紅ちゃんは怒りを噛みしめるようにゆっくりした口調で語る。



「あんたは周りの人を死に至らしめる死神で、友達までも苦しめる悪魔なんだよ。


あんたなんか生まれてこなければよかったのに」



『あんたなんか生まれてこなければよかったのに』


もう何度言われ続けた言葉だろう。

美紅ちゃんにも、おばさんにも、おじさんにも言われ続けてきたし、親戚中のありとあらゆる人達から煙たがられてきた。

けれど、いくら罵詈雑言を投げかけられても、「大丈夫、大丈夫」と深呼吸をすれば乗り越えてこられた。


でも、今は、「大丈夫」だなんてとても言えない。


ああ、本当に生まれてこなければよかったなと自分自身が思ってしまっている。


ああ、昔誰かが言っていた。

苦しいことの次には幸せが来ると。

人生は苦しいことだけじゃないと。

確かにその通りだけど、やっぱり幸せの次には奈落の底のような苦しみが待っていて、人生のほとんどは苦しみでできていることも違いない。


< 90 / 179 >

この作品をシェア

pagetop