彼の嘘 彼の本音
「…えと、藤真君。」

「…ん。」

「ごめんなさい、迷惑かけて。」

「…。」

「…。」

「…信じらんね。」

「…っ、…ご、めんなさい。」

「…危ないだろ、あんなとこで泊まるなんか。」

「え、」

「どんなやつがいるかわかんねーんだし。」


…え、もしかして、


「あんなとこで、…男もいんだろ。」


…これって、


「なんかあったらどうすんだよ。」


もしかして、心配してくれてる?


「…なに?」

「え?」

「俺、怒ってんだけど。」

「あ、うん。」

「…なんで、笑ってんの。」


藤真君が、全くあたしには興味がないと思ってた藤真君が、あたしを心配して叱ってくれてる。

勘違いではないと、思わず、

顔が緩む。


「…だって、」

「…だって?」

「藤真君、…心配、してくれたんだよね?」


改めて口に出せば、少し図々しい気もするけど、


「……、当たり前。」


小さく、そう言ってくれた彼が少しテレたように見えて、


「ありがとう。」


あたしが言えば、


「……ずりぃ。」


なぜかあたしがズルい事になってるんだけど、

彼のその一言で、なぜか空気が柔らかくなった気がしたから、

その言葉の意味も、気にならなかった。


 

 


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