彼の嘘 彼の本音
ガチャ。


「夢。」


また玄関が開いて、


「早く。行くよ。」

「あ、うん。ごめん。
ほんとに、お世話になりました。」


頭を下げて、慌てて藤真君に着いて出ていった。




「あれ、マジで言ってんの?」

「みたいね。」

「兄貴が、家どころか部屋に女の子入れるなんて、
…紗也ちゃんでもないことだよね。」

「そうね。紗也ちゃんは、藤真の特別だったのにね。」

「…特別な紗也ちゃんを越えた?」

「それはそうでしょ。あの子が女の子の名前を呼ぶなんて、それこそ紗也ちゃん以外初めてなのよ。」

「おまけにヤキモチ全開だったし。」

「ふふっ、そうね。
…伝わればいいんだけどね。お互い。」

「ん?なんか言った?」

「いーえ。ほら、あなたも早く用意しなさい。」

「ほーい。」


なんて、藤真君の家族の会話は、あたしが知るはずもなかった。
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