彼の嘘 彼の本音
連れられて来たのは意外にも普通の家で、

あたしの腕を引く女の子は、躊躇なく玄関のドアを開けた。


そして、気づく。

玄関の靴の数に、サイズに。


きっと、あたしがこのままこの家に入れば悪いことしか起こらないだろう。



「な、んですか?」

「は?」

「なんなんですか?いきなり。」

「いいから。」

「…いや、です。」

「え?」

「いやです。腕、離してください!」

「っちょっ、なによ、急に!」



あれはきっと、男の人の靴だ。それもたくさん。

何もないかも知れなくても、何かあるかもしれないことを考えなきゃ。


ここに来るまでも引きずるように連れて来られた為に、

もうすでに痛む足で逃げ切る為にはここに入っちゃいけない。


力を入れて掴まれた腕を引き抜いて敷地の外に出る。


慌てて出来る限り早く足を動かす。


ここに来るまでにコンビニがあった。

公園近くのコンビニ。


そこで落ち着いてタクシーでも呼ぼう。


まだ何かされたわけでもないから、コンビニ店員には言えないし…。









< 129 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop