彼の嘘 彼の本音
「あ、そうだ。
夢、コート貸して。」

「え、」


何度かメッセージのやり取りをし終えた様子の大樹先輩の何気なく発した言葉に困る。


「え、って。もう暖房効いてるし、家の中だし、…あ、着替えいるな。えーっと、…」


そう言って、クローゼットから服を探してくれている。


「はい。あっちで着替えて。」

「あ、うん。」

「あ、あとなんかいるものあったら買いに行ってくるよ。」

「あ、だったらあたしが、」

「いいよ。…まだ痛むだろ?」

「あ、…うん。」

「な。俺が後で行ってくる。そのあとは俺また友達んとこ行くから夢はここにいろよ。」

「…。」

「ゆーめ。」

「…ん。」

「気にしなくていいから。
とにかく今は、ゆっくり休め。」

「…ありがとう。」



ほんとに、何から何まで申し訳ない。

まだ腫れた頬も、切れた口元も、

力任せに蹴られたお腹だったり太ももだったり、

自分の家ならずっと寝ていたいくらい痛む。


それを気遣ってくれる優しさに、感謝の言葉しか伝えれないあたしが、悔しい。









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