彼の嘘 彼の本音
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目が覚めた時、ここがどこかはわからなかった。

なのに何故だか、すぐに分かった。


この、温かい匂いをあたしは知ってる。



「お、かあさん?」


そんなわけがないと、夢なのかもしれないと思いながら。


「…夢?起きた?」


再び閉じた目を、今度はしっかり見開いた。


「お、お母さん!っ、痛…。」

「あ、ダメよ!まだ起き上がっちゃ。…っ、」

「だっ、て、お母さん、」

「…っ、ごめん。ごめんね、夢。」

「お母さん、…。」


目に涙を浮かべて、あたしをそっと抱き締めてくれたお母さんは、夢じゃないことを教えてくれた。



お母さんが帰って来てくれた。


その事に安心して、また深い眠りについた。









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