彼の嘘 彼の本音
「藤真君。」

「ん?」

「いいよ、その事はもう。ごめんね、変な話聞かせて。あ、えと、それでね、」


ぐっと、力を入れて藤真君から離れる。

でもまだ近い、彼の表情はなぜか拗ねたように見える。


「…んだよ。」

「え?」

「なんだよ、変な話って。」

「…っ、」

「変な話なんか聞いてない。
俺は、夢の話を聞いたんだ。」

「…、あ、…うん。」

「夢が中学の時、陸上部のエースだったって話を聞いた。」

「…エースだなんて、」

「中3の、ずっと目指してた西日本大会に出れなかったって。
事故で、もう2度と走れなくなったって。」

「…っ、」


< 183 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop