彼の嘘 彼の本音
「…あたしが、嫌なんじゃないの?」

「…誤解させてごめん。態度悪かったよな。」

「…樹君が、」

「樹が?」

「気にしててくれて、あの時ごめんって。」

「…それ。」

「ん?」

「その、樹君って、やつ。」

「ん?」

「それもムカついた。」

「え?」

「俺呼ぶみたいに、すんなり呼ぶんだって。」

「…馴れ馴れしかった?」

「じゃ、なくて、…俺にとって、名前呼びって特別な感じがして、だから、“夢”って、なかなか呼べなかったし。なのに、樹のことも、大樹さんのことも、あと、桜汰のことも名前呼びだし。」

「あ、えと、だって、…大樹先輩は、中学の頃から皆名前呼びだったからで、樹君は、あたしのことを名前呼びするからって言われたからで、あと、桜汰君は、…名前呼びしなきゃ、田村君って言わなきゃならなくなる、から。」

「…わかってる。わかってるけど、…なんか嫌だった。」

「…でも、藤真君も、でしょ?」

「ん?」
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