彼の嘘 彼の本音
「改めて、言わせて。」

「…な、に?」

「夢が好きです。
俺と付き合って下さい。」


あたしに左手を出して、頭を下げる。


「なんで、左手?」


分かってて、わざと聞いたあたしは、貪欲なのかもしれない。


「だって、夢、左効きだろ?」


嬉しくて、涙が出そうになった。


藤真君が、

あたしを夢って、呼んでくれた時も、

あたしが足が痛いのを気づいてくれた時も、

どんな些細なことでも、すごく嬉しかった。

好きな人の、視界にちゃんと入ってるって思えて嬉しかった。

彼の左手をおそるおそる握る。


頭を上げた彼を見て、


「あたしも、藤真君が好きです。」

「ん。」

「あたしで、…いいの?」


聞いたあたしの声は涙声だった。


「夢がいい。」


そう言った彼の声は、少しくぐもって聞こえて、

彼の後ろに見えていたドアがしっかり見えたのと、

背中に回った腕が、ぬくもりが、

彼に抱きしめられたんだと教えてくれた。


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