彼の嘘 彼の本音
その日、臨時でバイトが入ったけど、藤真君には言わなかった。


今日、好きな人と会う約束をとっていたし、


いつも、律儀にシフト通りに迎えに来てくれる藤真君には申し訳ないと思っていたし、


だから今日は言わなかった。



バイト上がりに外に出ても、当然藤真君の姿はなかった。


代わりに、


「よっ!夢!」

「え、なんで?大樹先輩…。」

「いや、店の前通りかかったらさ、夢に似た子が見えたから。今日バイトって珍しいね。」

「そうなんだ。
そう、今日は臨時で。」


大樹先輩は、あたしの中学の時の2つ上の先輩だ。

あたしは、高校に入学前に引っ越してこの街に来たんだけど、先輩は大学がこっちで一人暮らしをするのに、引っ越して来たらしく、今年の春にほんとに偶然再会した。


「お疲れさま。」

「あ、うん。先輩もバイト帰り?」

「おー。疲れたー。」

「はは、お疲れさま。」


そう言って笑い合う。


「元気そうで安心したよ。
いきなり、【迎えに来てもらわなくて大丈夫です】、とか言われてさ。…彼氏って、どんなやつ?」

「あ、えと、…優しい人、です。」

「そうか。…夢の事、守ってくれそうか?」

「…うん。しかも、超イケメン。」

「え、マジか。
どんなやつ?写真ない?」

「あー、…写真嫌いだから、なかなか撮らしてもらえなくて。」

「そっか。じゃあ、仕方ないか。
あ、じゃあまた今度紹介してよ。」

「…うん。またね。」








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