彼の嘘 彼の本音
細く見える藤真君も、さらに細い西尾君も、ハンバーグセットだけじゃもの足りず、唐揚げやポテト、スパゲティーなんかも頼んでいた。 


普通にドリアを頼んだあたしに、


「足りる?唐揚げ食べる?」


なんて、西尾君が何度も聞いてくれてたけど、


何度もお断りすることになった。


多分、これが女の子と、育ち盛りの男の子との違いだと思う。


結局その日は、ご飯を食べて帰っただけ。


初めて2人きりだと思っていたから、少しだけ残念だった。


藤真君と2人きりだと間が持たなくて、シフトを伝えればすぐ帰ってたかも知れないから、

西尾君がいてくれて、一緒にご飯も食べれて良かったのかもしれない。



「あの、西尾君。」

「あー、夢ちゃんさ、樹でいいよ。
俺も夢ちゃんって、呼んでるのに。」

「え、あ、…うん。」

「藤真の彼女、初めて見たし。
これから宜しくね。」

「あ、…うん。」


紗也さんにしても、西尾君にしても、


知り合いになって、宜しくと言われても、正直返事に困る。

多分、あたしと藤真君の関係はそう長くはないと思うから。


「夢ちゃん?」

「ん?」

「藤真、心配してたよ。」

「へ?」

「夢ちゃんが休んでるって、聞いて。
今日、夢ちゃん家に行ったっしょ?」

「あ、うん。…近くの公園で会ったけど、」

「あーそれ、夢ちゃんに会いに行ったから。」

「…え、」

「藤真、分かりにくいかもしんないけど、
ちゃんと見てたら分かるから。」

「……、ん。」



と、この話は、藤真君が席をはずした時の樹君との内緒の話。

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