彼の嘘 彼の本音
あたしの後ろから、藤真君の声がした。


…嘘っ。ほんとに?


慌てて振り返れば、


「……何してんの?」


藤真君が言って、


「ね?早かったでしょ?」


なんて、樹君が言った。


「あ、えと、」

「夢ちゃん、なんかフラフラしてたよ。
送ってあげたら?藤真。」

「……、」

「あ、い、いいよ。一人で、帰れるし。」

「…行こ。
樹、電話サンキュ。」

「うん。またね、藤真、夢ちゃん。」


勝手に進む会話を、2人の顔を交互に見て聞いていた。


「行こ。」

「あ、え、と、藤真君っ。
あの、…あ、樹君、ありがとう。」


すでに帰り道を歩き出した藤真君の背中を追って、

樹君にお礼を言って、追いかける。

友達がいるらしく、そちらへ向かう樹君は、振り返って手を振ってくれた。
< 83 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop