彼の嘘 彼の本音
「藤真っ、君っ。
あの、待って、待ってっ。」


人混みを、ズンズン進む藤真君を必死に追いかけるけど、

痛む足のせいで追い付けなくなる。


藤真君が何故来てくれたのかはよくわからないけど、

とにかく、もういいよ、と言わなければいけないと必死に追いかけていたけど、これ以上は限界だ。


それに、送ってもらって帰っても家には入れないし、

万が一、父親に見つかれば大変なことになる。


せっかく逃げてきたのに。




この辺りは飲食店が多くて、人通りも多い。


もう、後ろ姿さえも見えなくなった。


「…はぁ。」


やっぱり、怒ってたのかな。

だよね、樹君に電話されたら、いくら偽物の彼女でも来ないわけにいかないよね。


なにか予定があったかもしれないし、


余計な事させちゃったもんね。



…あーあ、あたしって、なんでこうなんだろ。
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