彼の嘘 彼の本音
「…家、帰んないの?」

「……、」

「帰りたくない?」

「…、あの、…鍵を、なくして、入れなくて。」

「…親は?」

「あ、父親が…、仕事で帰れなくて…。」

「…帰れないって…、会社は?」

「あ、えと、…しゅ、出張、行ってるから。
だから、今日はネカフェで、」

「………は?」

「え?」

「ここに泊まるって、事?」

「あ、…うん。」

「…嘘だろ。」

「あ、だ、大丈夫。
藤真君、用があるんでしょ?
行ってくれていいよ。じ、じゃあ。」


きっと、呆れてる。

フラフラして、鍵をなくして、

咄嗟に出た嘘だけど、

我ながら情けない。


「…有り得ない。」


藤真君の呆れた一言が聞こえて、


分かっていても、やっぱり落ち込む。






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