跪いて愛を誓え
 たぶん、染みついちゃってたんだと思う。美人で積極的な真由美とイケメンでモテる元カレに対する、卑屈になっていたあの時の自信の無い気持ち。それが私の口に蓋をしたんだ。

 今も自信なんて無いけど……


「あんな奴ら、鼻で笑ってやればいい。男に媚びる事しか出来ない腐った女と性格悪い顔だけの男なんて、和泉の人生には必要ないだろ」


 青葉はそう言いながら、私の頭に手を置いた。


「今度同じ事があっても、もう俺はお前の代わりに怒ったりしないからな」


 その言葉に驚いた。青葉があんなに怒っていたのは、自分がムカついたんじゃなくって、私の代わりに怒ってくれていたんだ。


 ああ、ダメだ……

 いくら心に言い聞かせても、感情を止める事なんて出来ない。頭に乗せられた温かい手を、振り払う事なんて出来ない。





 私、青葉が好きだ……





 何だか涙が出そうになってしまって、慌ててうつ向いた。青葉はそれを目敏く見つけ、顔を覗き込んでくる。


「何だよ、和泉。泣いてるのか?」

「なっ、泣いてないよ! ただ……」

「ただ?」


 ……ただ、青葉が好きなだけ。


 でもそんな事言えないから、わざと冗談を口にする。


「ただ、顔だけの男って、青葉の事?」

「何だよ失礼だな! 俺は顔だけじゃねーよ!」

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