跪いて愛を誓え


「……さ、さあ、ビンゴ大会が始まってしまいます。ヒロさんも青葉も、一先ず会場に戻ってください。後は私がやりますから」


 無理に笑顔を作った湯田さん。ヒロはその言葉に、ゆっくりと部屋を出て行こうとした。だけど湯田さんの横を通り抜ける時、くるりともう一度こちらへ振り向き笑みを見せる。


「――――これからが、楽しみだな」


 ヒロは大きな笑い声を響かせながら、庭園の方へ行ってしまった。


「……何が、あったんですか?」

「和泉の事が、ヒロにバレた……」

「ええっ?!」

「和泉はもう、会場へ行かせない方がいいだろう。湯田さん、このままこいつ、マイクロバスに匿(かくま)っといてくれ。俺は園遊会に戻って、ヒロがおかしな事しないか監視しとくから」

「わ、分かりました」


 目の前で青葉と湯田さんがテキパキと今後の事を決めて行く。私は……

 事の深刻さに気が付いて、急激に身体が震えだす。ヒロに触れられた気持ち悪さも、思い出してしまい。何だか背筋がゾクゾクしてきた。


「……あ、青葉」


 彼の掛けてくれた羽織に包まりながら、震える声で名前を呼んだ。それに気が付いた青葉は、私の方へ来てくれて、ポンと頭に手を置いて。


「そんな顔するな、大丈夫だ。お前はバスで昼寝でもしてろ」


 ポンポンと、叩く青葉の大きな手。優しい手……
< 152 / 265 >

この作品をシェア

pagetop