跪いて愛を誓え
 ヒロの事をすっかり話してしまうと、湯田さんは眉をしかめてしまった。

 それはそうだろう。聞くと、今でも毎日のように青葉と私の移籍を求める電話が、ジャスティスの店長から掛かってくるそうだ。


「……お二人の引き抜きが上手くいかない事に業を煮やして、直接乗り込んでくるつもりなんでしょうか」

「分かりません。でも、あのヒロの言い方だと、あまり良い話ではない事は確かだと思います」


 はあ、と二人で同時にため息を吐いた瞬間事務室のドアが開けられ初が顔を出した。


「――――湯田さーん! ……あれ? どうしたんスか、二人で暗い顔して」


 呑気な明るい声に脱力。でも今はただただ、初の突き抜けた明るさに救われた。


「何でもありませんよ。それはそうと、初芽。入る時はノックをしなさいといつも言っているでしょう」

「あっ! すいません! でもそんな事より、湯田さん! ジャスティスの奴らがまた来たんスよ!」


 ――――来た!!


 湯田さんと目を合わせると、彼はコクリと頷く。


「初芽、ジャスティスの方をここへお通しして。それから、青葉を呼んで来てください」

「了解ッス!」

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