跪いて愛を誓え
 青葉の言葉に、目元に手を当てると指先に涙が触れた。


 知らないうちに私……涙が出ていたんだ……


 どうして泣いているのか、自分でも分からなかった。ヒロに敵わないと絶望したからか、それとも青葉の顔を見たからか。


「あーもう! しょうがねえな! また意味不明に泣きやがって!」


 理由が分からないから止めようも無い涙を懸命に拭っていると、青葉はまた、私の頭を鷲掴みした。そして――――


「こんな駅前で、みっともねえだろ!」


 そのままグイと、自分の胸元に引き寄せた。


 ……って?! ええ?! ちょっと!!


「ちょ……! 青葉! 人が見てる! それに私、今、男!!」

「しょうがねーだろ! お前が泣き止まねえんだから!」


 離れようとしたけど、両手でぎゅっと抱きしめられてしまい、逃れられない。顔は青葉の胸元に押し付けられたまま。

 男同士で抱き合う姿……他の人にどう見られているのか、考えただけでも恥ずかしい。だけど、青葉の腕の中は温かくて優しくて、いつの間にか身体を預けけて泣いていた。


「……ほんと、お前馬鹿で困る」


 泣き続ける耳元で、青葉のそんな呟きが聞こえた。
















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