跪いて愛を誓え
だけど、ホストクラブ?!
夜の怪しいお店なんて……この前までただの会社員だった小娘に、出来る訳が無い。
どうしておばあちゃんは、私にこんなお店を継がせようとしたんだろう。もう亡くなっちゃったから、その意味なんて聞けないけど。
「――――おい、お前」
俯いて黙り込んでしまった私の上から、また偉そうな声が降って来た。顔を上げるとそれは――――なんだっけ、確かNO.1ホストだっていう『青葉』だ。
青葉はやっぱり偉そうに、私を見下ろしていた。
「お前さっき、店の様子を見に来たって言ってたよな?」
「は、はい……でも…………」
正直、店の様子なんてもうどうでもいい。
無理だから。ホストクラブなんて、私には無理だから。早く家に帰って、昨日秋本さんが置いて行ってくれた相続放棄の書類にサインしよう。
「だったら、こんな所に居ても何にも分かんないだろ。だから、これから客として体験してみろよ」
「い、いえ……私はもう…………」
青葉の提案は断ろうとした。だってもう、相続しないって決めたから。今更、ホストクラブ体験なんてしてもしょうがない。
「これから開店だから丁度いいだろ――――おい! 初! はつー!」
それなのに青葉は、全然話を聞いてない。私の側まで来ると腕を掴んで無理矢理立たせ、事務室の外に向かって声を上げた。