跪いて愛を誓え
「別の仕事で長く店を離れていたので、全権を店長の息子に任せていたのですが……こんな騒動になっているなんて思ってもいませんでした」
正子さんはここ何年か、海外にいたそうだ。道明寺店長と連絡は取っていたようだが、うちとの事までは知らなかったと。そして一昨日帰国し、初めてうちとのトラブルを聞いたらしい。
そうか、だから湯田さんも青葉も、彼女の事を知らなかったのかもしれない。
「お店の閉店を賭けるなんて、脅迫まがいの勝負をけしかけてしまい、私の目が行き届いておりませんでした。本当に申し訳ありませんでした」
正子さんはそう言って、また深々と頭を下げた。
「い、いえ! こちらこそ申し訳ありません! トラブルの元になるような事をしてしまったのはうちの方です。ですから、そちらだけに非があるというわけではありませんから」
正子さんの丁寧な謝罪に、湯田さんは慌てて説明を付けたし、頭を下げる。それを見て、私も頭を下げた。
「そうです! 私がいけなかったんです。軽率な行動をしてしまって……! 申し訳ありません!」
全ての原因は、思い返してみれば私だ。青葉に借金を返す為とはいえ、深く考えずにやってしまった。私が男装なんてしなければこんな事にはならなかったんだから。