跪いて愛を誓え


 あの日私が出した決断は、ティアーモを閉店するという事だった。


 もちろん、その場にいた人たちには反対された。青葉も湯田さんも、考え直せと詰め寄り。ヒロと道明寺店長にまで、どうしてそうなるんだと呆れられ。ただ一人、正子さんだけは何も言わなかった。

 確かに、あのまま正子さんの提案に乗って、全部無かった事にしてしまう事も出来た。それで今まで通りのティアーモになるんだと、分かっていた。

 だけど……

 全ての原因は私だったんだ。だから、その責任を取らなくてはいけないと思ったんだ。私が犯した過ちを、無かった事になんて出来ない。それがずっと心に引っかかっていた。

 お客様や青葉、湯田さんにお店のみんな。ジャスティスのヒロにも道明寺店長にも正子さんにも。たくさんの人に迷惑を掛けてしまった。

 だから、ちゃんとそれ相応の罰を受けなくちゃダメなんだ。

 もし無かった事にしてティアーモを続けたとしても……いつかまた、きっと同じような事が起こってしまうだろう。今度はもっと大勢の人に迷惑を掛けて、取り返しのつかない事になってしまうかもしれない。

 そんなトラブルを収める力は、今の私には無い。

 それに、あの時見た売上勝負の結果は、ティアーモの負けだった。ほんのドンペリ一本分程の差だったが。

 悔しいけどそれが多分、今の私の力量なんだ。
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