跪いて愛を誓え
 早く帰って相続放棄の書類にサインしなくちゃいけないし。それに、こんな事になるとは思っていなかったから……


「私、今あまりお金も持って無いし……」


 ホストクラブで遊ぶのに、一体いくら掛かるのか分からないけど。お財布の中身はあまり多くは無い。この前会社を辞めたばかりだし、実家住まいで貯金も疎かだった私の経済状況はかなり厳しい。


「ああ! それなら大丈夫ッスよ! 初回限定コースで、六十分ワンドリンク三千円っていうのがあるんで、それにしときますから!」


 そうじゃなくって!!


 何とか断る理由を捻出したけど、あえなく失敗。そうこうしているうちに、開店時間が近づいたのか。私の後ろに若い女性が何人か、並び始めた。

 彼はその人たちににこやかに挨拶をし、腕時計で時間を確認。そして一人で頷くと、時間になったのか黒い大きな扉を開けて開店を告げた。
















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