跪いて愛を誓え
「え? 本当に?!」
「ああ、あのばーさん、来ると煩くて参ったよ」
おばあちゃん、そんなにこっちに出て来てたんだ。こんなに近くまで来ていたのに、家に寄ってくれた事なんて一度も無かった。
それも全く、おばあちゃんらしい。
薄暗くてキラキラした店内の夢の様な雰囲気と、王子様みたいに優しい青葉のせいか。それとも、もう飲み干してしまいそうな、カンパリオレンジのアルコールのせいか。身体がふわふわして少し良い気分になってきてしまった。
「そろそろグラス空きそうだな。もう一杯、何か頼むか?」
目ざとく気付いた青葉が聞いてくれたが、私はそろそろ帰るつもりだった。この店はワザとなのか、時計が無い。今、何時頃なんだろう? 初回六十分コースだったのに、カクテル一杯で結構ゆっくりしちゃったようだ。
そんな時だった。よろよろとした足取りで、お客らしき女の人が私たちの席へ乱入して来たのだ。
「――――青葉~! いつまでこの席にいるのよぉ~! あたしの事、忘れてなぁい?」
真っ赤なプチドレスワンピを着たその女性は、もうかなり酔っているようだ。青葉にしなだれかかるように座った。
「三奈子(みなこ)さんを忘れる訳ないじゃない。でもごめんね、今はこの娘が指名してくれてるから」