跪いて愛を誓え
 書類を送るとすぐに、秋本さんから連絡が来た。相続が完了するまで、まだ暫くはかかるらしい。他の相続と全部一緒にするからだそうだ。

 だからそれまでは、青葉の言う通りティアーモでホストをしなければならない。

 それで私は、あのマンションに住む事にしたのだ。

 お店の閉店まで働いたら、電車が終わってしまうし。毎日酒臭く酔って帰ったりしたら、両親に何を言われるか分からない。

 両親には、おばあちゃんのお店は居酒屋だと嘘をついた。夜の仕事だから、電車で通うより部屋があるんだからそこに住んだ方が効率がいい、とも。

 私が相続したのは、本当はホストクラブだとバレる可能性を少しでも減らしたかったんだ。

 だけど、自らホストの巣窟へ踏み込むのだ。不安と緊張が半端無い。


 ドキドキしているうちに、もうマンションの目の前まで来てしまった。実家から一駅で裏通りとはいえ、駅前だからほんとすぐだ。

 マンションの前――――正確には、ホストクラブティアーモの前で青葉と、初日に会ったもう一人のホスト初が、私を待ち構えていた。


「――――逃げずに来たな、和泉」


 青葉は私を見ると、にやりと笑った。
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