跪いて愛を誓え
 マンションの中には初めて入った。外から見ただけじゃ分からなかったけど、一階部分は来客と談話出来るような広いエントランスになっていて、中の扉から入居者が使う駐車場へ行けるようだ。もちろんその扉も、暗証番号を入れなければ開かない。セキュリティは万全みたいだ。

 居住スペースは二階から。部屋数は少なくて、二階に二部屋、三階にも同じ数。そして私が住む四階は、おばあちゃんが使っていた、他よりも広い3LDKの一部屋。

 今住んでいるのは、二階にティアーモの専属バーテンダーの人と若手ホストさん。初は三階で、もう一部屋は空き部屋なんだって。

 二人には、お店で紹介してくれるそうだ。もちろん、私を新人ホストの男として。


 意外と人が少なくて……良かった。


 私が男装してホストになるなんて事は、あまり知られたくない。恥ずかしいし、もしお客にバレたら大変だ。だから、秘密を知ってる人は少ない方がいい。

 今のところ知っているのは、青葉と店長の湯田さん。それと、この初だけみたいだ。

 だけど初は、私が前オーナーの孫で次期オーナーだという事迄は知らない。おばあちゃんの部屋を使うのは、どうやら知り合いか何かだと思ってくれている様だ。まあ、知られない方がいいのかも。変に気を使われちゃっても困るし、いつ正式にオーナーになれるのか分かんないし。
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