好きをどうか叫ばせて。
失ったもの
遠くで誰かの声がする…。





私の名前を呼ぶ声…。





誰が私を呼んでいるの…?









もしかして…





秋人…?

秋人!!






「…!!」







「里瑠!やっと目が覚めたのね!…よかった…本当に…。」





目を覚まし、首をゆっくり動かし横を見ると、そこにはお父さんとお母さん。




呼んでいたのは秋人じゃ…なかったんだ…。






「大丈夫か里瑠。…なにがあったんだ。あんな雨の中で倒れ込んで。意識も無かったんだぞ。」






真っ白で清潔感の保たれている病室。
慣れないベットの上。

心配そうに私に声をかけるお父さん、お母さん。






私…倒れてたんだ。





なんで?倒れて…。





そして思い出してしまう。
秋人に言われた言葉の一言一言を。


秋人…。秋人…あれは本当なの?

嘘だよね。


私が病院にいるってこと知ったら


「あんなの嘘に決まってるだろ!大丈夫か?心配させんなよ。」


っていつもみたいに優しくしてくれるよね?





「…。」



あきとぉ…やだよ…。



ふと流れてしまう涙。





「里瑠?どうしたの?なにがあったのよ」




お母さんとお父さんの前ではあまり弱いところは見せたくなかった。

いつも仕事で追われる両親にさらに面倒はかけたくない。





なのに。なのに…。






思い出してしまうんだ。



秋人の声も温もりも仕草も全部。



でも、お母さんとお父さんに

何か言わなきゃ。違うって

何もないって。






「……。」





「里瑠?どうしたんだ?そんな口の動きして?」











驚きに自然と涙が止まる。

なんで…?







言葉が…出ない。




しゃべれない…



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