バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 絵に描いたように順風満帆だと信じて疑わなかったすべてを、一番信じていた相手に滅茶苦茶にされるという悪夢を見た私が、もう一生恋愛はしないと誓ったのも当然の成り行きだと思う。

 そんな私がブライダル専門校に通うと宣言したとき、周囲は大反対で、ずいぶん意見された。

 自暴自棄になっているとか、自殺行為だとか、考え直せとかいろいろ説得されたけれど、私の意思は揺るがなかった。

 私は、私が果たせなかった夢や幸せな未来を、ひとりでも多くの人に手にしてほしい。

 奇跡のような幸運を手に入れることができた人たちの門出を、祈りを込めて送り出してあげたい。

 どうか私の分まで、あなた方に幸せが訪れますようにって。

「もちろんこんな風に思えるまでには、ずいぶん時間がかかりました。今も完全には立ち直れていないと思います。だからあなたが立ち直るまでに長い時間が必要なのは、当然だと思います」

 瞬きすることを忘れたように私の話に聞き入っている彼女に、私は笑いかけた。

「さっき花婿様は『二年も前に別れたのに』って言ってたけど、それって変な理屈ですよねぇ? なんで二年経ったからって、すっかり立ち直ってあげてないといけないんですかね?」

 二年経とうが五年経とうが十年経とうが、傷は傷だし、痛みは痛みだし、悲しみは悲しみで、苦しみは苦しみだ。
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