バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
私は努めて平静な態度を装いながら、できるだけ事務的な口調で答えた。
一刻も早く彼にこの場から立ち去って欲しかったのだけれど、彼は立ち去る気配もなく私に話しかけてくる。
「あの女性が理性を取り戻したおかげで、実害も混乱も最小限に食い止められそうだな。お前のお手柄だよ」
「いえ、私はなにも」
「……大変だったな」
副社長の静かなひと言がズンッと重く胸に響いて、思わず手の動きが止まった。
彼が言わんとしていることが、この騒動のことなのか、部屋を片付けていたことへの労いなのか、私の過去のことなのか、判断がつかない。
だからこの慰めの言葉に、どんな反応を返せばいいのかわからない。
適当な笑顔でやり過ごすのが一番なのだろうけれど、たったいま泣き顔を見られてしまったとあっては、それすらできなかった。
一刻も早く彼にこの場から立ち去って欲しかったのだけれど、彼は立ち去る気配もなく私に話しかけてくる。
「あの女性が理性を取り戻したおかげで、実害も混乱も最小限に食い止められそうだな。お前のお手柄だよ」
「いえ、私はなにも」
「……大変だったな」
副社長の静かなひと言がズンッと重く胸に響いて、思わず手の動きが止まった。
彼が言わんとしていることが、この騒動のことなのか、部屋を片付けていたことへの労いなのか、私の過去のことなのか、判断がつかない。
だからこの慰めの言葉に、どんな反応を返せばいいのかわからない。
適当な笑顔でやり過ごすのが一番なのだろうけれど、たったいま泣き顔を見られてしまったとあっては、それすらできなかった。