バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 ほんの短いその言葉に、彼からの深い思いやりを感じた私は、もう涙を堪えられなかった。

 次から次へと両目から溢れ出る涙は、ぜんぶ彼のシャツが吸い取ってくれる。

 それが、まるで自分の思いのすべてを受け止めてもらっているように感じられて、流れる涙と共にどんどん心が軽くなっていった。

 優しさに甘えることを許された私は、思う存分に涙を流しながら、心の中で彼に語りかける。

 ありがとうございます、副社長。

 もうちょっとだけ、こうして泣かせてくれますか?

 カラードレスが届いて、現実が動き出してしまうまで。

 どうかそれまで、あと少しだけ……。





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