バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
 その笑顔がすごく魅力的で、私はまた食い入るように見惚れてしまった。

 この人ったら、たったいま色っぽい表情をしていたかと思えば、一変してこんな子どものような笑顔を見せるんだ。

 小学生のイタズラみたいなことをするくせに、泣いている女性に黙って胸を貸してくれる男らしいところもあるし。

 そのギャップが王子然とした容貌と相まって、女性を惹きつける大きな魅力になっているんだよなぁ。

 しかも、たぶん本人はまったく無自覚なところが余計に始末に負えない。

 ……って、なにを私はポーッとしながら彼の魅力を称賛してるの!?

「『泣き顔がかわいい』なんて殺し文句がとっさに出てくるあたり、さすがイケメン様はリップサービスもお得意でいらっしゃいますね」

 平常心を保つために、わざとそんな憎まれ口を叩くと、たった今まで楽しそうに笑っていた副社長が急に不満顔になった。

「リップサービスって、なんだよ。俺はお世辞なんか言わない」

 腕を組み、斜に構えた黒い瞳で私をじっと見つめる彼は、ちょっとばかり拗ねているように見える。

「俺はお前のことを本気でかわいいと思っている。その気持ちをリップサービスなんて軽い言葉で片づけるな」
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