バージンロードで始めましょう~次期社長と恋人契約~
私がこうして戸惑っているのは、彼が焦点をぼやかすような言い方ばかりするからだ。
自分の気持ちを匂わすようなことは言うくせに、私に対してなにも明言はしていない。
この人は、わざと仄めかすような態度をとっているの? そうして私の心を意図して煽っている?
……違う。この真っ正直な男は、そんな姑息なことをしない人間だって私は知ってる。
彼は、私自身に答えを出させたいんだ。私が過去に受けた傷のせいで、恋愛に臆病になっていることを理解しているから。
だから、ガーゼに包んだ言葉で、私の中の大切な感情を優しく揺り起こそうとしてくれている。
そのたびに私の心は、土の下に隠れた芽吹く寸前の種みたいに、熱く震えてしまうんだ。
でもこの感情は……嫌じゃない。
「亜寿佳」
副社長が、うつむいたままの私の顔に向けて、ゆっくりと片手を伸ばしてくる。
また鼻の頭を押されるのかと思ってキュッと肩をすぼめたら、彼の指先は私の唇に優しく触れた。
柔らかい皮膚が、男らしく太い指先の固さと温もりを敏感に感じて、その官能的な生々しさにハッと胸を突かれる。
自分の気持ちを匂わすようなことは言うくせに、私に対してなにも明言はしていない。
この人は、わざと仄めかすような態度をとっているの? そうして私の心を意図して煽っている?
……違う。この真っ正直な男は、そんな姑息なことをしない人間だって私は知ってる。
彼は、私自身に答えを出させたいんだ。私が過去に受けた傷のせいで、恋愛に臆病になっていることを理解しているから。
だから、ガーゼに包んだ言葉で、私の中の大切な感情を優しく揺り起こそうとしてくれている。
そのたびに私の心は、土の下に隠れた芽吹く寸前の種みたいに、熱く震えてしまうんだ。
でもこの感情は……嫌じゃない。
「亜寿佳」
副社長が、うつむいたままの私の顔に向けて、ゆっくりと片手を伸ばしてくる。
また鼻の頭を押されるのかと思ってキュッと肩をすぼめたら、彼の指先は私の唇に優しく触れた。
柔らかい皮膚が、男らしく太い指先の固さと温もりを敏感に感じて、その官能的な生々しさにハッと胸を突かれる。